やさしい経済学―家族の変化と社会保障

第5回 子どもの貧困とライフサイクル

若林 緑
リサーチアソシエイト

子どもの貧困と世帯の小規模化について考えましょう。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、2015年の子どもの貧困率は13.9%でした。17歳以下の子どもの約7人に1人が貧困状態にあります。

相対的貧困率は、世帯の可処分所得を世帯人員の平方根(√)で割った等価可処分所得をもとに導きます。等価可処分所得の中央値の半分(貧困線と呼ばれ、15年では122万円です)に満たない人の割合が相対的貧困率となります。

等価可処分所得を計算する際に、分母に世帯人員があるため、世帯の小規模化が進むと貧困率は高くなります。夫と妻が150万円ずつ稼ぎ、子ども2人と4人世帯を構成していたとすると、等価可処分所得は150万円なので貧困線を上回ります。もし、この世帯が2つに分かれ所得が150万円のひとり親世帯が2つになると、等価可処分所得は約106万円となり、貧困線を下回ります。

しかし7人に1人が貧困といっても、ライフサイクルにおいて常に貧困状態にあるとは限りません。15年の時点で貧困状態にあった子どもも、その次の年には貧困を脱し別の子どもが貧困に陥っている、というケースもあり得ます。

筆者らは、厚生労働省が01年生まれの新生児を十数年にわたって追跡した「21世紀出生児縦断調査」のデータを使って、子どものライフサイクルにおける貧困のパターンを分析しました。その結果、01年に子どもが生まれた世帯で、前の年の00年に貧困線を下回っていた世帯の割合は5.5%でした。それが子どもの誕生とともに01年には10.9%に跳ね上がり、その後は子どもの成長とともに低下し、13年には6.0%となりました。

この調査のデータでは、母子世帯の状況を両親がいる世帯と比較することが可能です。母子世帯では出産前でも約3分の1が貧困線を下回り、出生時には50%を超えます。その後低下していくパターンは同じですが、それでも13年で3割強が貧困状態にあります。シングルマザーの就業率は低く、また非正規が多いことから、母子世帯の経済的自立は難しいようです。

2020年1月24日 日本経済新聞「やさしい経済学―家族の変化と社会保障」に掲載

2020年2月10日掲載

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