少子化や高齢化が進むなかで、近年は世帯構造の変化にも関心が集まるようになっています。一人暮らしや夫婦のみという世帯の増加です。核家族化が加速し、世帯の小規模化が進んでいるのです。
2000年と15年の国勢調査を比較すると、一人暮らし世帯の割合が約28%から約35%に上昇した一方、夫婦と子どもからなる「標準世帯」は、約32%が約27%に低下しました。
高齢者の一人暮らしも増えています。65歳以上の人の世帯状況をみると、自分だけで暮らす単独世帯は、00年の約20%が15年には約27%へと上昇し、三世代世帯は約27%から約12%へと低下しています。高齢の親が成人した子どもや孫と同居するケースが減っていることがわかります。今や90歳や100歳まで長生きすることは決して珍しいとはいえません。子どもが独立し夫婦のみで生活する、その後に配偶者と死別し、単身で生活するという期間が長くなっているのです。
世帯が小規模化する要因には、人々が結婚しなくなったこともあります。生涯未婚率とも呼ばれる50歳時未婚率は急上昇しており、15年には男性で約23%、女性でも約14%です。近い将来、男性の3~4人に1人、女性の5人に1人が未婚のまま老後を迎えることも考えられます。
社会保障の主要な機能は、高齢や介護、病気・ケガ、失業などのリスクを社会的にシェアしようというものです。社会の構成員がお金を出し合い、リスクに直面した場合の損失を補填する社会保険機能です。社会保障財政が逼迫し、公的な部分が整理・縮小されることは避けられないでしょうが、これまでなら家族や世帯が担ってきたリスクシェアの機能も、縮小傾向にあるといえます。
この連載では、社会保障だけでなく、家族や世帯によっても担われてきたリスクのシェアが、小規模化する世帯でどう変化しているかを見ていきます。同時に、今後の社会保障制度はどうあるべきかを考える参考になればと思います。
2020年1月20日 日本経済新聞「やさしい経済学―家族の変化と社会保障」に掲載