やさしい経済学―AIの雇用への影響を考える

第3回 労働者に必要な能力が変化

岩本 晃一 上席研究員

波多野 文 リサーチアシスタント

今回は、自動化によって人々の仕事がどのような影響を受けると考えられているかを紹介します。

経済協力開発機構(OECD)は2016年、自動化により高度な専門知識が必要な職業と専門知識を必要としない職業の需要が増え、中間層の職業需要が減少する二極化が進行すると指摘しています。このような二極化は、欧米では00年代前半から進行し、今後も進むと考えられています。

米国のオーター教授は15年、中間層の職業で生じている雇用減少が07年から12年にかけ、機械化のリスクが比較的少ないとされる高スキルの職業にも広がっていると指摘しています。

また、これまで紹介したフレイ&オズボーン、アーンツ、OECDは、平均年収や教育水準が低い労働者ほど、機械への置き換えリスクが高くなると指摘しています。教育水準が低い労働者は、低スキル・低収入の仕事に従事することが多く、機械への置き換えリスクが高い傾向にあります。

自動化によって労働者に求められる能力が変化する可能性もあります。OECDは、自動化リスクが比較的低い職業であっても、その職業を構成する作業の大半は自動化が可能であり、労働者は作業の変化に柔軟に適応する必要があると指摘しています。世界経済フォーラムは、社会的スキル(感情制御やコミュニケーション能力)に加え、ITリテラシーや情報処理能力が中核的能力として求められると予想しています。

これに伴い、人材の採用も影響を受けます。コンピューター・数理関係などの専門分野は人材獲得競争が激化するでしょう。これらの分野は大学以上での専門的教育が不可欠なうえ、技術変化が速くて育成が難しく、供給が追いつかない可能性が高いからです。

ドイツ政府が公表した白書「労働4.0」は、このような仕事内容の変化が労働者の成長を妨げる可能性を指摘しています。自動化の進展によって人間の仕事が過度に簡素化されれば、労働者の問題解決能力が衰える要因になります。逆に自動化が人間の仕事を過度に複雑化させる可能性もあります。いずれの場合も、人間に新たなストレスをもたらす可能性があります。

2017年11月8日 日本経済新聞「やさしい経済学―AIの雇用への影響を考える」に掲載

2017年12月8日掲載

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