やさしい経済学―AIの雇用への影響を考える

第1回 「雇用の未来」を世界中で研究

岩本 晃一
上席研究員

波多野 文
リサーチアシスタント

2013年に英オックスフォード大学フェローのC・B・フレイとM・オズボーン准教授は、米国の労働人口の47%が10〜20年内に機械に代替されるリスクがあるという推計を発表しました。これを契機に世界中で「雇用の未来」に関する研究がブームになりました。我々も47%という数字に対する疑問から調査研究に取り組みました。この連載では、その中から以下の4点について紹介します。

第1点は、世界中で数多くの諭文が発表されましたが、それらによって解明され、コンセンサスが得られた内容についてです。それらの諭文は研究者が責任を持って予測可能な、おおむね20年程度先までを議論の対象としています。それより先の、どのような技術が出現するかわからない未来の空想物語を前提にした議諭は見当たりません。

また、諭文では人工知能(AI)やロボットといった言葉は少なく、「自動化(オートメーション)」という言葉でほぼ統一されています。西洋文明において技術進歩とは自動化のことであり、AIやロボットなどはその一部でしかありません。さらに、「AIは人間の雇用を奪うか」といった極端な議論ではなく、自動化が進めば「雇用の質」はどうなるかという「雇用の構造問題」として課題が設定されています。

第2点目に、「雇用の未来」の課題を最も深刻に捉え、政府主導で取り組んでいるドイツの動向を紹介します。ドイツ政府は今後の労働の課題について検討する「労働4.0」プロジェクトを実施してきました。その結果を16年11月に白書にまとめ、今は具体的な対策に乗り出しています。

第3点目は、日本企業の現場を訪ね歩き、日本型雇用の下で新技術がどのような形で導入されつつあるか現地調査した内容です。また、17年8月には1万社を対象にアンケート調査も実施しました。

第4点目は、以上の調査研究の結果、導き出される政策の紹介です。

2017年11月6日 日本経済新聞「やさしい経済学―AIの雇用への影響を考える」に掲載

2017年12月8日掲載

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