やさしい経済学―公共政策を考える 電力自由化の影響

第2回 ガス改革にも波及

橘川 武郎
ファカルティフェロー

今年始まった本格的な電力システム改革は、(1)家庭用など電気の小口消費者が電力会社を自由に選択できるようにする(2)卸電力市場の活用を通じて電力需給の安定を図るとともに送配電制度の透明性を高める(3)電力会社の送配電部門の中立化を徹底化する、などの目的を持っています。

これらを達成するためにシステム改革は3段階に分けて遂行されます。改革の原案を策定した政府の電力システム改革専門委員会は2013年2月、報告書を作成し、改革の工程表を発表しました。

今年4月に実行に移された第1段階では「電力広域的運営推進機関」が設立されました。これは、(2)の目的を実現するための施策です。

16年4月からは、(1)の目的を達成するため電力小売の全面自由化が実施されます。ただし、この段階では電気料金規制は撤廃されず、経過措置として残存するのです。

20年4月からは、電力会社の送配電部門の法的分離が行われます。(3)の目的の達成を目指すこの発送電分離の施行に合わせて、経過措置として残っている電気料金規制は撤廃される予定です。

第3段階の発送電分離を決めたのは15年6月に成立した改正電気事業法です。その際、ガス事業法も改正され、都市ガス事業も17年をメドに小売りの全面自由化が、そして22年をメドに大手3社(東京ガス、大阪ガス、東邦ガス)の導管部門の法的分離が、実施されることになりました。

電力システム改革は、ガスシステム改革にまで波及したのです。16~17年の電力・ガス小売り全面自由化を機に、日本のエネルギー業界は、新たな「大競争時代」を迎えることになります。

電力システム改革の工程表
時期主な改革内容
第1段階2015年4月広域系統運用機関の設立
第2段階2016年4月小売り全面自由化
第3段階2020年4月発送電分離、料金規制の撤廃

2015年8月25日 日本経済新聞「やさしい経済学―公共政策を考える 電力自由化の影響」に掲載

2015年9月17日掲載

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