やさしい経済学―雇用を考える 若者と高齢者

第4回 正社員の重要性低下

川口 大司
ファカルティフェロー

雇用労働者に占めるパート・アルバイト・派遣社員といった非正社員の比率が35%に上っていることが、しばしば話題になります。少し前までは、非正社員といえば女性の雇用形態というイメージが強かったのですが、最近は男性の若年者の中にも非正社員が増えています。

総務省統計局「労働力調査」によれば25~34歳男性の雇用者に占める非正社員比率は2002年には9.4%でしたが、12年には15.3%まで増加しています。女性や若年男性を中心に非正社員として働く人々が増えているのはなぜでしょうか。

非正社員が増えている理由として、IT(情報技術)の進歩によって通常の事務作業が決まり切ったものとなり、非正社員にできる仕事が増えたことが挙げられます。さらに、グローバル化を背景とした競争激化によって、企業が直面する将来への不確実性が高まり、製品サービス需要が減少した場合、簡単に解雇できる非正社員を雇うようになったことも影響しています。

加えて、正社員の多かった製造業が衰退する一方、非正社員の割合がもともと高かったサービス業が増加傾向にあることや、柔軟な働き方を求める女性が増えたこと、高齢者の就業率が上がったことなども指摘されています。

これらの指摘はどれも正しいのですが、どこまで非正社員の急増を数量的に説明できるかが重要です。亜細亜大学の浅野博勝准教授や神戸大学の伊藤高弘准教授とともに、筆者は先に挙げたような要因の数量的なインパクトは、限定的であることを明らかにしました。

より重要な要因は、正社員の重要性の低下です。日本の多くの企業は、正社員の長期雇用を保証し、技能蓄積に応じた賃金を支払うことで、労働者に技能蓄積を促す制度を採用してきました。これは、労働者の技能蓄積が企業の高収益率につながる安定成長を前提とした制度でした。安定成長の時代が1990年代前半に終焉したことが正社員の重要性低下につながりました。

2013年10月22日 日本経済新聞「やさしい経済学―雇用を考える 若者と高齢者」に掲載

2013年11月11日掲載