Start Up 中小製造業のIoT

第11回 研究会に参加したモデル中小企業の試行錯誤の体験④ -株式会社ダイイチ・ファブ・テック-

井上 雄介
リサーチアシスタント

岩本 晃一
上席研究員

「IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関する研究会(以下、IoT研究会)」が検討対象としたモデル企業のうち、本稿では株式会社ダイイチ・ファブ・テックのIoT導入事例について紹介したい。

同社は、CO₂3次元レーザやYAGレーザ複合機などの最新の加工機で、金属加工を行う部品製造メーカーである。国や地方公共団体からの公的支援で、汎用ロボットや3次元測定機を導入するなど、事業を強化している。同社がIoTを用いて目標としたのが、設備稼働率が、設備や時間により大きく変動することで受注量の上限値が制約を受けるため、それを平準化することであった。

稼働データ収集と人材育成

2016年における同社の新規計画は「IoTを活用した3Dデータ機器による非量産精密製缶の供給体制の確立」であった。これは、自動運転技術などAI、IoT技術が発展していることから、「変革の波」が近づいているという危機感と、更なる発展を目指してこうした技術を活用しようという意欲があったためである。これが同社がIoT研究会に参加した動機である。

研究会でIoTを実際に活用する企業の「生の声」を聞いて、同社は、データ収集とその作業を行う人材育成が必要だと痛感した。生産プロセスの問題点を発見する必要があるため、稼働データを集めなければならないが、「どのように、どのようなデータを取得すれば良いのか」が判然としなかったからだ。そこで同社は、茨城県工業技術センターが提供する「工場設備の見える化を睨んだIoT化技術の修得コース」に参加した。これはデータ収集に関する講義と実習を行い、データ管理の人材を育成することを目的としており、同社にとって貴重な機会であった。

同社は研修を経て、早速データ収集の第一段階に取り組んだ。加工機(レーザ・プレス・ベンダー・溶接ロボットなど)に無線LANを介して非接触の電流計を取り付けることで電気使用量の把握が実現した。各稼働データを測定し、オンラインでパソコンに送付することに成功している。データの一元管理が可能となったことで、製品ごとの生産過程における設備稼働情報が徐々に「見える化」できるようになった。

現状、工場内の全ての設備の稼働データを把握しているわけではないが、稼働率の上昇によって生じる利益を概算すると次の通りである。これまで生産現場では、正社員14人、パート6人が作業している。労働時間をそれぞれ8時間、6時間とした上で、稼働率を5%改善したとすると、1日当たり7.4時間の削減が可能となる。すべての設備にセンサーを取り付けるには80万円ほどを試算しているが、収集したデータの活用で十分回収可能といえるだろう。

中小企業の「適切」なIoTの導入法とは?

同社が今回取り組んだIoT導入のキー・ファクターは、既存の3D機器を中心に生産体制の効率化を目指したところにある。IoTを単に導入すれば良いわけではない。手段としてのIoTを、効率的に活用できるよう、自社の課題と向き合うことが必要である。人材育成・データ収集と段階的に生産現場改革を行う同社の成長は、IoT導入プロセスの1つの指標となるだろう。

同社の次の目標は、稼働データを加工・分析し、活用することで、最終的な目標である設備稼働率の平準化に繋げることである。集めたデータを「どのように利用していくのか」が今後の鍵を握る。「工場の見える化」を実現することで、他社に負けない高付加価値の製品供給に期待したい。

2017年11月10日 日本物流新聞「Start Up 中小製造業のIoT」に掲載

2017年12月19日掲載