Start Up 中小製造業のIoT

第4回 IoT導入成功事例①

岩本 晃一
上席研究員

中小製造業へのIoT導入成功の共通要因は、①社長自身がIT投資の重要性を十分に理解し、社内を牽引する強いリーダーシップで投資を行ってきたこと、②自社内にシステムエンジニアを擁していること。以上、2点に尽きる。

では、IoT導入でどんなメリットが生じるのか。以下の3社は中小製造業ではないが、IoT導入成功の象徴例として紹介したい。

① 三浦工業 遠隔監視で故障前メンテ

国内ボイラー市場で約40%のトップシェアを占める三浦工業(愛媛県松山市)は、IoTという言葉が生まれる遙か以前の1989年から「遠隔状態監視」サービスを行ってきた。顧客が使用するボイラーに埋め込んだセンサーから得られるデータを収集し、職員が集中データセンタの画面で稼働状態を監視。異常が感知されればメンテナンス要因を派遣し、生産の要となるボイラーが故障・停止する前に修理する。

ボイラーに保守契約を付帯して販売する手法は「他社に価格で負ける」「メンテ料金は前金ではもらえない」と社内の反対もあったが、創業者三浦保の強い意志で押し切った。そうした差別化により同社の商品は好調に売れ、連結売上高は16年3月期までの10年間で、52.5倍に増加している。

② キュービーネット 各席の稼働状況を見える化

国内510店、海外108店のヘアカット専門店を展開するキュービーネット(東京都)は、約千円の単価でヘアカットサービスのみを提供しており、年間国内利用人数は約1700万人。この膨大なデータを「見える化」して分析することで作業の効率化を導き出し、予想経営計画通りに成長を続けている。

同社では、客が券売機にお金を入れる時点、チケットを受け取って施術を開始した時点、エアウオッシャーという機械で髪の毛を吸い取った時点の3つの時点でデータを自動的に収集し、どの店のどの席がどのような稼働状況にあるかをリアルタイムで把握できる。

生産性が落ちている席については、技術不足なのか、女性客が続いたのか、さまざまな仮説を立て、現場で事実を確認する。各カットブースに接してある滅菌器にはタイマーが表示されており、概ねの施術時間をスタッフ自ら把握可能だ。データ分析を基に現場の知恵を出し合い、作業効率の向上に力を入れている。

③ 旭酒造 データ活用で杜氏を凌ぐ

高級日本酒「獺祭(だっさい)」を生産する旭酒造(山口県岩国市)はかつて山口県で第4位の酒造メーカーだったが、経営危機の際に「杜氏」が逃げ出した。

桜井社長は、かねがね、酒造りのノウハウを杜氏が独占することに疑問を持っていたため、これを機に、杜氏抜きで、もっと美味しい日本酒を造ると決心した。

古い酒蔵をIoT導入の最新鋭工場に改修。酒造りの経験のない若者を雇用し、理論とデータ・サイエンスで製造することで、「獺祭」が出来上がった。

「獺祭」が高品質かつ安定量産が可能になったのは、その原料である「山田錦」の量産の安定化が可能になったからである。

生産が難しい原料米「山田錦」の生産現場に富士通のIoT「akisai」を導入。日々の作業実績や1時間ごとの水田の気温・湿度・土壌温度・土壌水分等を把握する「遠隔状態監視M2M」を行い、高品質で安定的な量産を実現している。

環境情報を蓄積するマルチセンシングネットワーク
(旭酒造:獺祭の原料となる山田錦の水田)
環境情報を蓄積するマルチセンシングネットワーク
出典:富士通より提供

2017年7月25日 日本物流新聞「Start Up 中小製造業のIoT」に掲載

2017年12月19日掲載