Start Up 中小製造業のIoT

第1回 IoTとは何か、正しい理解が大切だ

岩本 晃一
上席研究員

昨今、IT技術を用いた「カイゼン」で飛躍的な競争力向上をもたらすケースが数多くみられるようになってきた。多くの人はそうしたカイゼンIT技術の組み合わせを「IoT」と呼んでいる。気になるのは、この「IoT」という言葉が独り歩きしていることだ。

特に、IoTを「モノのインターネット」と捉えると、大きな誤解を生む。

例えば、工場内にIoTを導入すると、インターネットに接続しなければならず、外部からのウイルスの侵入やハッカー攻撃に晒される」と思い込み、IoTの導入を躊躇する人がいる。

だが本来、工場内にIoTを導入する場合は、閉じたネットワークマ十分であり、必要もないのにあえてインターネットに接続して危険にさらす必要はどこにも無い。

また、「IoTとは親会社や取引先と接続することであり、自分の会社の内部情報、例えば、親会社に隠していたコスト情報などがばれてしまうことだ」と信じ込んでいる人もいる。しかし、IoTとはその所有者の意に反して、無理矢理インターネットに接続させることではない。嫌なら接続しなければいいだけである。

もし仮に外部と接続する必要があったとしても、大手通信会社が販売しているIoT専用回線に接続すればよいのであって、危険にさらされやすいインターネットに無理矢理接続する必要は無い。警備員を雇って治安を確保するのと同様、ネットワークの安全を守るためには、資金を投じる必要があるのは当然だが。

他にも、最近の新聞に多数載っている「人工知能(AI)」も、これまで「最適制御」と呼ばれていたものと一体どこがどう違うのか、分からない使い方になってはいないか。

こうして日本社会が「バスワード」としてのIoTやAIに翻弄される一方で、欧米の専門家が使用する言葉といえば、デジタル化(Digitalization)、コンピュータ化(Computerization)、ネットワーク化(Networking)、オートメーション化(Automation)である。

彼らにとっては、IoTもAIもITも関係ない。 彼らの目に映っている第4次産業革命という時代の大きな技術変化とは「アナログをデジタルに置き換えていくこと」であり、人間の活動のなかに「コンピュータを導入すること」であり、別々に稼働していた機械を「ネットワークで接続すること」なのであり、その結果、人間が従来から行ってきた事及び人間が行えなかった事を機械にやらせる「自動化」なのである。

筆者には、こちらの表現こそが、今目の前で現実に起きている変化の本質を的確に捉えていると感じている。

では、なぜ今、世界中の人々が、「第4次産業革命だ!」と大騒ぎをしているのだろうか。

ムーアの法則によれば、コンピュータの処理速度や蓄積容量は、時代とともに、累乗的に増加していく。1995年のインターネット元年から今日までの約20年間に起きた変化の何倍から何十倍もの規模の変化が、向こう20年間で、あらゆる分野で起きると予想されている。

例えば、スーパーコンピュータ「京」が、近い将来、手のひらサイズになり、数万円で買えるようになる可能性がある。そうなれば、我々の生活やビジネスは劇的に変わるだろう。この変化にどう対応していくか。それが今後の中小製造業の競争力を大きく左右する。実際、現在のスマホは、私が学生時代に使っていた大学のスーパーコンピュータよりも性能ははるかに高い。

「自分の会社は、親企業にぶら下がっていれば大丈夫」と思っておられる方は、パナソニック、シャープ、東芝などを思い出して頂きたい。もはや、大企業も、いつどうなるかわからない時代なのだ。

次号から経済産業研究所で主宰してきた「IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関する研究会」の実例を中心に中小へIoT導入のメリットと課題をみていきたい。

2017年6月10日 日本物流新聞「Start Up 中小製造業のIoT」に掲載

2017年12月19日掲載