経済を見る眼 新埋蔵金21兆円の行方

佐藤 主光 ファカルティフェロー

将来の借金返済などに備え、地方自治体は財政調整基金などを積み立ててきた。それら基金の残高が20.8兆円(2014年度実蹟)に達したことが話題になっている。

自治体の大半は地方交付税など、国からの財政移転に依存している。国の基礎的財政収支の赤字(16年度約18.7兆円)が続く中、地方で基金を貯め込んでいる状況は、かつて国の一般会計が厳しい中、特別会計は多くの余剰金を抱えていた(「母屋でおかゆをすすっているのに、離れではすき焼きを食べている」)ことを想起させるかもしれない。むろん、地方自治体にも言い分はある。基金残高の少なからぬ金額は地方債償還のほか、将来の公共施設など社会インフラの更新費用に充てられる。実際、自治体は老朽化したインフラを多く抱えており、その更新計画を作成してきている。

ただし、自治体別に見ると、これですべてが説明できるわけではなさそうだ。財政力があって地方交付税を受け取らない都市圏の不交付団体の基金増は、計画的というよりも、景気が上向いて企業からの税収(法人事業税・住民税)が増えた結果でもある。

企業税収は地域間の(人口1人当たりで見た)税収格差を広げる要因であり、好況・不況に左右されやすいことから地方の税収を不安定にしている。実際、リーマンショックの際、東京都は1年間で約1兆円の税収減となった。都市圏の自治体からすれば、景気後退に備えて基金を積むのは当然の備えといえる。他方、住民に身近な公共サービスを提供する自治体の税源が不安定なこと自体が問題視されてもいいだろう。本来、自治体の税源は企業課税ではなく、地方消費税のように税収が安定的な税に拠ることが望ましい。

基金は富裕な自治体だけに集中しているわけではない。「基金の積み立て水準が高い自治体は財政力が弱く、65歳以上の人口比率が高い」という特徴も指摘されている。地方創生など、国は過疎自治体へのテコ入れを強化してきたが、こうした自治体は人口減少で地域経済の振興や公共サービスの提供が困難になっていることもありうる。少ないながらも単独では「使い道のないおカネ」が積み上がっているのかもしれない。とすれば、自治体のさらなる合併促進や自治体間連携による経済活性化・公共サービス提供の広域化など地域の再編成が必須といえる。

加えて、基金増の背景には自治体の国に対する不信があるようだ。近年、地域間の財政力格差を是正するため法人住民税の国税化が進んでいる。また、小泉政権が進めた「三位一体改革」では、地方交付税や補助金が減額された。こうした経緯から自治体が法人住民税のさらなる国税化や交付税の減額に備えて基金を積んでいる面は否めない。将来不安が貯蓄を高めるのは家計や企業と変わらない。

このように、21兆円に上る地方の基金残高は不安定な税収や地方圏における人口減少、地方の国への不信など地方財政をめぐる現状を象徴するものといえよう。貯まった基金をどうするかとともに、これらの課題への取り組みが求められる。

『週刊東洋経済』2017年9月9日号に掲載

2017年11月15日掲載

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