日本企業における外国人材の活躍を考える①
外国人労働者の経済効果

劉 洋
研究員

外国人労働者がもたらす文化・社会的な影響は避けられないため、どの国にも外国人労働者や移民に反感をもつ人々がいます。それにも関わらず、外国人労働者が世界的に増加しつつあります。なぜなら、経済への影響が大きいからです。

世界的にみれば、労働力が生産性の比較的低い地域から、生産性の比較的高い地域へ移動することで、受入国と送出し国両方で経済厚生が改善し、世界的な富が増加することは、経済学の一般的な認識です。実際のデータを用いた研究もそれを支持するエビデンスを多く示してきました。例えば、テキサス工科大学のパウエル教授は2015年の著書『移民の経済学』のなかで、国際人口移動に対する障壁を取り除くことでグローバルな富は世界全体のGDPの50~150%も増加すると、従来の研究を基に述べました。

日本でも、受入国経済にプラスの影響が得られるとの試算が発表されています。例えば、日本総研は、専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人の流入による経済波及効果、雇用効果、財政収支への効果はすべてプラスであることを2011年に示しました。また、BNPパリバ証券が2017年に発表した、全外国人労働力を対象とした試算も、日本の外国人労働力がGDPを押し上げる効果を持つとの結果でした。

受入国最大の懸念は、外国人労働者が自国の労働者の雇用を奪い、賃金を引き下げることでしょう。しかし、労働需要の理論から考えると、それは、①外国人労働者と受入国の労働者とが直接的な代替関係にあり、②外国人労働者が受入国の生産技術・イノベーションに与える影響が小さく、③受入国に同じ分野で人手不足が起こっていないという条件が揃った状況で起こることです。日本の現状と併せて考えると、外国人労働者の流入が日本の労働市場に悪影響を与える可能性は少ないと思われます。

まず、外国人労働者のうち、受入国と同じ技術レベルを持つ労働者は直接的な代替関係になりますが、異なる技術レベルを持つ労働者は補完関係になります。例えば、外国から来た単純労働力は、受入国の単純労働力とは代替関係になりますが、受入国の非単純労働力とは補完関係になります。大竹文雄・大阪大学教授らは1993年の論文で、企業データの検証を行い、外国人労働者と非正規労働者は代替関係にあるものの、正規労働者とは補完関係にあることを示しています。

加えて、外国人労働力が受入国の技術・イノベーションや問題解決力に大きなプラスの影響を与える場合には、生産の伸びが雇用に与えるプラスの影響があるので、たとえ代替関係によって雇用に与えるマイナスの影響があっても、前者が後者を上回る場合に、最終的に受入国の雇用は増加します。当然ながら、高度外国人材は受入国の技術・イノベーションへの貢献も大きいため、長い間、多くの国で人材獲得戦の対象になっています。他方で、一般労働者も、多様性を高めることから、受入国のイノベーションなどに寄与することが、海外の多くの研究で明らかになっています。例えば、ホン先生(ミシガン大学)らの2004年の研究によると、母集団からランダムに多様な個人を抽出したチームは、同母集団のエリートだけを抽出したチームよりも、高い問題解決力を示しました。長い間、単一文化が職場を支配してきた日本では、外国人労働者の活用によって、問題解決力やイノベーションの向上につながると考えられます。それによって雇用全体も増加し、外国人労働者と補完的な日本人労働者はもちろん、代替関係にある日本人労働者も増加することが期待できます。

さらに、人手不足を補う外国人労働力が受入国の雇用与える、代替関係による負の影響は小さいと推測できます。日本総研の2019年の調査によると、日本企業の8割弱で若手・中堅層を中心に人手が足りず、3割がほぼ全年齢層で不足しているとの結果が示されました。人手不足で産業が縮小し、企業が経営破綻を懸念している現在こそ、外国人労働者の活用は有効でしょう。

上記の3点より、外国人労働者の流入が日本の労働市場を圧迫する可能性は少ないと考えられます。外国人労働者のデータに制約があるため検証が難しいですが、中村二朗教授(日本大学)らの2009年の著書『日本の外国人労働力』によると、外国人労働者の流入が地域の失業率に与える影響は明確に確認されず、中卒・高卒外国人労働者の流入は地域の賃金水準にもほとんど影響を与えないことがわかりました。

このように、日本にとっては、外国人労働力のプラスの経済効果は無視できないため、グローバル競争が激化する今日、外国人労働力を活用する政策が求められると言えるでしょう。もちろん、自由貿易や労働代替型の技術進歩と同じように、外国人労働力の活用がもたらす経済利益は、すべての人々が平等に受けられるわけではないため、所得分配などの補完的な政策も同時に必要であろうと考えられます。

2019年9月5日 生産性新聞に掲載

2019年11月5日掲載