現在、日本企業では、おもに2分野でデジタル化が急速に進んでいる。それは事務部門へのRPA(注1)と製造業の現場へのIoTである。本稿では限られた誌面のため製造業を対象としている。
RPAはやがて中小・小規模の製造業にも拡大
現在、日本企業の事務部門では、RPA導入に伴う人員削減が進んでいる。なかでも、金融業界が最も積極的である。最近、メガバンク3行が情報化投資により約3万人の人員削減を発表した。2019年春の新卒採用を見ると、銀行は一般職の採用を大幅に抑えている。非正規は雇い止めである。
銀行・金融と並んでRPA導入に積極的なのは財政が苦しい地方自治体だ。事業活動の主役は男性で、女性はその補助役という労働慣行が残っている日本においてルーティン業務はおもに女性が担っていることから、デジタル化により最も女性が失職リスクが高いとの指摘がIMFからなされている。
今、日本ではRPAの導入により、まずは金融と地方自治体が先陣を切り、やがて製造業その他の業種に拡大することで、「より高スキルのルーティン業務の事務職」が機械に代替されようとしている。中小企業でも事務部門でRPA導入を考えているという話は、最近よく聞かれるようになった。
製造業の現場へのIoT導入による「見える化」からAIへと拡大
今、日本の製造業の現場に導入されているIoTは、「見える化」までであり、表示されたデータを見て、故障原因を探り、対策を考えるところは依然として熟練作業員が担っている。それは高齢化し、不足する熟練作業員をデジタル化が補佐するものであり、熟練作業員を活かす内容となっている。だが、過去の前例を「学習」し、表示されたデータを見て、対策を判断するといった過去の前例の延長線上にある作業は、早晩AIに代替される。現在、熟練作業員が担っている業務の多くがAIに代替される日はすぐそこまで来ている。
まずは雇用が増える方向からスタートしている日本、だが将来は不透明
新しいデジタル技術を、製造業の現場に導入すると、それを稼働させるための専門技術者が必要とされる。一方、金融業などでの事務部門では、「ルーティン業務の機械化」が継続して進行しており、事務職の削減が続いている。経済産業研究所が2017年8~10月に行った調査によれば、その増加分と減少分を現時点で合計したところ、減少分よりも増加分が多いことがわかった。それは日本企業が事務部門よりも、製造業の現場においてデジタル化を熱心に進めているからといえる。この結果から、日本の産業界は少なくとも現時点では、日本でのデジタル化は雇用が増えるところからスタートしているが、その傾向が今後とも継続するかどうかは、不透明だ。
求められる変化への対応
日本は人口減少が進み、熟練作業員や生産年齢人口が減っている。その一方でデジタル化により労働力が余る領域も出てくる。そうした労働市場の構造変化をそのままにするのでなく、将来、伸びる産業に労働力を移動・配分できるよう、雇用市場を構築できれば、日本の産業は今後も発展しよう。

(回収1,372社、回収率13.62%)
月刊 商工会 1月号に掲載