中国人民元は国際主要通貨になりうるか? 金融覇権主義と国際金融システム

伊藤 宏之
ノンレジデントフェロー

要旨

本稿は、中国人民元が米ドルに代わる主要国際通貨となりうるかをドル中心の国際金融システムの観点から考察する。中国は米国と並ぶ経済大国であり、世界最大の外貨準備保有国である一方、人民元の国際的地位は中国経済の存在感に見合うものではなく、国際的利用は依然として限定的である。その背景には、ドルが圧倒的な金融市場の流動性、ネットワーク外部性、安全資産としての信認を備え、国際金融システムに深く組み込まれていることがある。近年では、米国が外交的・地政学的目的の達成に金融制裁などを積極的に活用するようになり、グローバルサウスを中心にドル依存を低下させようとする『ドル離れ』の動きもみられる。中国も人民元の国際化を進めているが、金融市場の未発達や制度に対する信認の低さなど多くの課題を抱えており、当面はドル中心体制が維持される可能性が高い一方で、長期的には国際通貨体制がレジームシフトを迎える可能性も否定できないことを示す。

『国際問題』2026年8月号(No. 732)に掲載

2026年10月2日掲載

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