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※本プロジェクトは、終了しております。

競争ルール戦略

情報家電のネットワーク化が進み、通信を生かした用途が広がってくれば、放送、通信、遠隔医療、遠隔教育などサービス事業者のサービスを実現するための一定のハードやソフトの仕様の共通化が必要になる。その際、情報家電全体のアーキテクチャデザインの育成に失敗すれば、サービス事業者はPCにこぞって流れ、情報家電としての競争力を失う可能性もある。 本当に大切なことは、メーカー同志の技術競争ではなく、ネットワーク化後の情報家電に「何が出来るのか?」、「それはどういうシステムとサービスをどう組み合わせているからなのか?」を、消費者や各種サービス事業者にしっかりと提案しサービス参入を促進することではないのか。これらを実現するための方策を提示する。

2004年11月14日 異業種を引き込むプラットフォーム

参照モデルの詳細な狙いや内容に特化して話を進めてきたので、ここでまた少し初心に返ります。なんで、参照モデルなんて議論を始めたのか・・・。

総論Blogの方でもいくつかを紹介していますが、先週、先々週と、本Blogをネタにした会合がいくつかもたれました。その中で、共通して出された指摘が、本レポートは、「家電がデジタル化してもネット化してない」と指摘していながら、どうすればネット化するのかが書いていない、という点です。確かに、書いてませんよね(苦笑)。今日は、その点から、少し。。。


確かに、今回のレポートには、通信ビジネスや通信規格の標準化といった問題にはあまり触れていません。家電がネット化しないのは、通信のビジネスモデルや通信の規格に問題がある。そういう見方もありますけれど、僕はそこから議論を始めるべきではないと思っています。これは、通信ビジネスが経済産業省の所管業種ではないから、ということではありません。そこから入ると、また、「技術先行型」思考に陥るのではないか、という危惧があるからなんです。シーズとニーズは出会うものであって、シーズを押しつけるものではないと。

最近、ユビキタスという言葉が流行っていますが、このオリジナルは、識者の皆さんご存じのとおり、Mark Weiserという方の“Ubiquitous Computing”という概念にあります。メインフレームの時代、PCの時代、UCの時代と3つの時代変化を整理した上で、メインフレームの時代は、限られたコンピュータ資源をみんなで共有する時代、PCの時代は、パーソラナイズされた(分かり易く言えば一人一台PCを持った)コンピュータ資源で情報を分割管理する時代、UCの時代は、複数のコンピュータ資源をみんなでリッチに共有してみんなで情報を共有し合う時代。こういう整理です。だからこそ、逆に、個人情報やセキュリテイということが大きな問題になると。

ちなみに、マークワイザー氏の基本文献は、こちら
Ubiquitous Computingに関する3つの時代定義は、こちら

情報家電がネットワーク化するっていうのは、こういうユビキタスなIT利用環境の構築に、家電が参加するってことなんだと思います。電子カルテでも良いし、優れた教育教材でも良いし、娯楽番組でも、お買得商品情報でも何でも良い。いろいろな情報を、そのニーズに応じて、特定の情報流通事業者を介することなく、みんなで共有し、それぞれがそれぞれの用途で検索し、自在に活用することが出来る。そういうIT利用環境を作るってことなんだと思います。
別に社会が「いつでもどこにでも」あるわけでは無いので、「ユビキタス社会」っていうのは、ちょっとわかりにくい概念整理じゃないかなと思うんですけれど、コンピュータ資源が「いつでも、どこでも」使える、という意味でのユビキタスなIT利用環境(=ユビキタス コンピューティング)ということでは、よく分かりますよね。そこに家電も入り込む。そこで家電が端末として優位を占める。それが、情報が主役となる経済で家電が新たな可能性を見つけるということだと思うんです。

その時、当然ですが、機器単位でものを考えても上手く行かない。一つのコンピュータ資源の形態としてネットワーク化されたデジタルアプライアンス全体を、一つのプラットフォームとして考える。しかも、それを技術からアプローチしても上手く行かない。結局、それを「何に使うの?」という話にから始める必要がある。
実は、こういう技術へのニーズ論議を、家庭一般から解き起こすのは非常に難しい。Webだって、最初は原子力の特定の研究活動の中から出てきたわけですし、インターネット自体もそういう軍事用途から学術研究に転じ、その学術ユーザコミュニティの中から市場化してきた。1993年から1994年頃、工業技術院の研究管理関連業務でインターネットを活用していた僕の印象では、どちらというとインターネットも当初は、GopherとかFTPとかっていうプロ向け用途が中心だったわけですが、いつの間にかWebの方が勝ち残っていった。情報家電も多分同じことが起きる。多分、プロ向けの、若しくは、非常に限られた用途で用いられる特定の形態の端末や端末アプリが出てくる。そのうちに、より多くのアプリケーション・サービスを引き込むことに成功した端末が生き残っていく。そういうことになるのではないかと。

ちょっと前ですけれど、CDだってDVDだって、最初は、どれだけソフトが集められるかが鍵って言ってたじゃないですか。だからプロ向け用途のデジタル音源から、一般用途に降りてこれたわけですよね。情報家電も一緒で、最初はすごく特定のプロ向けに特化した形態から始まって、最後は、いろいろなサービスをビジネスプラットフォームとしてのユビキタスなIT利用環境により多く引き込めた方が勝ち残る。そういう競争が、BB端末としての情報家電について、もう既に始まっていると思うし、その競争に乗れるか乗れないかが、家電がネット化するかどうかの境目なんだと思ってます。逆に言うと、最初に手をつけたプロ向け用途の潜在的なポテンシャルが高ければ高いほど、用途として尖ったものを持っていればいるほど、一般化されたときに広くいろいろな可能性を示すことになる。

それが普及フェーズに降りてくれば、リファレンスって、当然必要ですよね。CDにだって、DVDにだって、リファレンスはちゃんと整ってますよね。家電だって、同じじゃないですかと。まずは、超プロ向け用途を呼び込みましょうと。それを懐に収めながら、同時並行的に、きちんとリファレンスも整備していきましょうと。ちょっっと時間が無くて焦っているので、議論が圧縮されてしまっているのですが(大分?)、そんな視点から、参照モデルってやっぱり大事なのあではないかと、思っているんです。

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2004年11月14日掲載