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競争ルール戦略

情報家電のネットワーク化が進み、通信を生かした用途が広がってくれば、放送、通信、遠隔医療、遠隔教育などサービス事業者のサービスを実現するための一定のハードやソフトの仕様の共通化が必要になる。その際、情報家電全体のアーキテクチャデザインの育成に失敗すれば、サービス事業者はPCにこぞって流れ、情報家電としての競争力を失う可能性もある。 本当に大切なことは、メーカー同志の技術競争ではなく、ネットワーク化後の情報家電に「何が出来るのか?」、「それはどういうシステムとサービスをどう組み合わせているからなのか?」を、消費者や各種サービス事業者にしっかりと提案しサービス参入を促進することではないのか。これらを実現するための方策を提示する。

2004年11月07日 参照モデルは何故必要か。

先週、日経デジタルコアでお話をさせていただく機会を頂戴した際に、参照モデルの話にも少し触れました。そうしましたら、会場から、「参照モデルは市場全体に必要なものか。消費者との接点にだけ作るという考え方もあるのでは」という非常に鋭いご質問をいただきました。今日は、丁度、その部分をとって、この問題をもう少し掘り下げてみたいと思います。

自分の見解を一言で申し上げますと、参照モデルは、家電メーカーと各種サービス事業者との連携をより強めるためのもの。消費者との関係だけではなく、事業者同士が互いの市場を可視化するために共有する方向で考えたらどうか、ということです。
昔から、良く、キラーアプリとかソフトがたくさん集まってくるような機器でないとダメだ、っていうのはよく言われてきましたけど、情報家電も同じで、医療、教育、娯楽など、サービスビジネスが続々と集まってくるようなデジタルアプライアンスを作る、これが家電のネットワーク化とプラットフォーム化を押し進める鍵だと思うんです。その促進策として、参照モデルを考えたいと。
PCだって、OSI7階層論議や、OSということそのものを定義するところから、徐々にオープン化された市場を認知させ、いろいろなアプリケーションビジネスを巻き込んできた歴史じゃないですが。家電もブロードバンド端末を目指すなら、同じ戦略を、しかも自らのイニシアチブで進めることが必要だと思うんですね。・・

さて、サービスと情報家電の連携について、日経さんにまとめていただいた、僕の話の該当部分を引用してみます。

そこで今後日本の取るべき方向性の一つとして、村上氏が強調するのが、
教育、娯楽、医療などの消費者サービス(ライフソリューションサービス)への進出を前提とする、
家電のネットワーク化の進展だ。
村上氏は、家電メーカーのビジネスがインターネットなどで消費者に直接サービスを提供する
電子商取引などのビジネスと乖離(かいり)していると指摘。この分野に家電メーカーがなかなか
進出できない理由として、家電をプラットフォームとしたサービス事業の利益が全く未知数である
ことや、ネットへの対応を強化してオープンな仕様を選択すれば、独自技術で差別化を図ることが
できなくなることなどを挙げた。
このような背景から、リポートでは、メーカーは独自技術に依存した既存のビジネスを守りつつ
「新たなサービスが出てきた段階で、その後で最低限必要なインターフェースを追加していくという
『待ちの戦略』をとらざるを得ない」といったジレンマを抱えていると指摘している。
村上氏は結論として、短期的には収益拡大に寄与する海外展開を強化しながらも、
新たにサービス分野への進出を同時に進めるべきとの見解を示した。行政としては今後、
市場を可視化して多様なプレーヤーが参入できる環境整備のための「デジタル家電の
参照モデル(インターネットにおける「OSI」7階層の定義のようなもの)」の構築や、
複雑化するソフトウエア開発に対応できる人材育成などにも取り組むといった施策の方向性も
示した。(引用終わり)

自分は、90年代半ばから一貫してIT政策の担当を続けていますが、今の状況って、90年代前半にPCの回りで起きていたことととっても同じようなことになっているんじゃないかと思うんです。

90年代、日本のコンピュータメーカは、PCがまだまだコンピュータ市場の主役になるというストーリーを本気では信じていなかった。メインフレームを縦割り分割され囲い込んだお客に確実に売ること、これがメインのミッションだと思っていた。でも、インターネットの普及を契機として市場は大きく性格を変えて行き、気がついてみたら、自分の技術を売る市場が無くなっていた・・・

こんな悲観論ばかりをIT産業担当の課長補佐が言うと、関連企業の皆さんからも市場関係者からも疑いの目をかけられそうですが、今年来年のことを言いたいんじゃ泣くって、3年後くらいを考えると、もう時間ってすごくないと思うんです。その時、インテルさんやマイクロソフトさんが何にコストをかけていたか。市場の階層構造の定義を如何に自分に有利に持ち込むか、そして、その階層構造をつかって消費者が最後に「何ができるか」という部分を見せるためのマーケティングに、チップメーカーやOSメーカーが自ら完成品メーカー以上にコストをかけていた。その歴史を、今後の情報家電市場の展開に上手くいかしていく必要があるように思うんです。

続きは、また。。。

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2004年11月7日掲載