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競争ルール戦略

情報家電のネットワーク化が進み、通信を生かした用途が広がってくれば、放送、通信、遠隔医療、遠隔教育などサービス事業者のサービスを実現するための一定のハードやソフトの仕様の共通化が必要になる。その際、情報家電全体のアーキテクチャデザインの育成に失敗すれば、サービス事業者はPCにこぞって流れ、情報家電としての競争力を失う可能性もある。 本当に大切なことは、メーカー同志の技術競争ではなく、ネットワーク化後の情報家電に「何が出来るのか?」、「それはどういうシステムとサービスをどう組み合わせているからなのか?」を、消費者や各種サービス事業者にしっかりと提案しサービス参入を促進することではないのか。これらを実現するための方策を提示する。

2004年10月10日 EAと情報家電

村上です。本章も非常に読みにくくて恐縮なんですが、これから少しづつ、本章の狙いと概要について、ご説明をさせていただければと思います。

本章の提案を一言で要約すると、EA(EnterpriseArchitecture)のノウハウを、情報家電の世界にも持ち込もうじゃないかと言うことなんです。その目的は、「多階層化した市場の可視化」です。その心は、IT産業の態度が大き過ぎやしないか。重要なことは、ITの側は黒子に徹すること。それを様々な家庭向けサービスの手段として使いたいと思う人の要望に、徹底して応えることだと思うんです。

さすがに、意味不明なので、もう少し解説を・・・

今回のレポート全体の議論は、情報家電を家電量販店で売られてお終いのCommodityの世界から、家庭向けの様々なサービスと連携した「顔の見える商品・サービス」に変えていこう、という思いから始まりました。フラット化して大型化しても、それだけならTVはTVだし、デジタル化して大容量化してもビデオはビデオ。情報家電って、そんなんちゃうやないの? ってところです。モノには無い、新たな付加価値を載せないといけない。別に時刻表の終電確認でも、音楽でも何でも良いんですけど。

でも、そのためには、時刻表の書き手とかレコード会社とか、いろいろなプレーヤにこの市場に入って貰わないといけない。「情報家電の収益力強化に向けた道筋」の概説スライドの中でも、最後のスライド(31ページ)に載せた絵があります。情報家電をデジタル化の進んだ「もの作り」の視点で捉えていると、どうしても下半分の台形に問題意識が止まってしまうんですが、実は、大事なのは、その上半分を如何に作るかだと思うんです。

この両者の間に、どうしても分断傾向がある。例えば、これを上から下まで綺麗に繋げることに成功したのは、NTTdocomoさんのi-Modeビジネスだと思います。こういう、ある種のガリバー企業が本当に市場全体を押さえるのであれば、この市場に入りたい人は、とにかく、Docomoさんに全てを教えて貰えばよい。確かに、こういう市場の作り方もあると思います。

先般、いわゆる「モバイルソリューション」企業の経営企画担当の方にお会いしたときには、「それでも携帯市場はまだマシだ。自分たちの提案を受け入れる余地がある。家電市場は最悪だ。大手家電メーカーはそのそぶりすら見せない。」と仰っておられました。確かに、そうなんでしょう。そういう新しいビジネスを受け入れる姿勢に他の企業よりも富んでいたからこそ、携帯コンテンツ市場も2000億円を超えるビジネスに成長したんだと思います。

でも、ガリバー企業型のアプローチだけで本当に、新しい技術や新しいビジネスを柔軟に受け止めるような市場が作れるでしょうか?この市場って、別に電話の延長線上にあるわけでもテレビの延長線上にあるわけでもない。むしろ、娯楽系でも、映画とか、音楽といった媒体ビジネス、その他にも教育ビジネス、医療ビジネス、ホームセキュリティサービスといった、これまでITを各製品・サービスの製造・生産手段としてしか使って来なかった産業の延長線上にあるんです。それは、ビジネスソリューションの世界が、人事、会計、製造管理、物流ロジスティクスなど様々な専門分野と融合していったのと同じことです。

では、その時にビジネスをリードするのはどちらか。僕は、ITの側ではないと思うんですね。なのに、ITの世界の場合、まあ難しいからなんでしょうが(正確に言えば「市場における情報の非対称性」が生み出す外部不経済ということなんでしょうが)、ITの側の方がおおきな顔をしてしまう。だから、通信サービスとしての価格・採算であるとか、自分が売り出したい技術とか、ソフト組むときに必要な人月積算だとかにこだわりすぎてしまう。でも、重要なことは、ITの側は黒子に徹して、それをサービス提供の手段として取り込みたいと思う人の要望に徹底して応えることだと思うんです。それに応える選択肢を出来るだけたくさん備えることだと思う。それが、なかなか出来ない。

じゃあ、何で出来ないかというと、そもそも、ITをビジネスに使いたいと思っている人から、IT側の事情が今全く分からないからなんです。もう携帯にしか出口がない、そういう人は、それでも携帯会社さんに頭を下げてでも行かれるでしょう。でも、普通に店頭販売や訪問販売ができる人達は、どうして中身も良くわからないリスクの高いものに、無理をして手を出すでしょう?

ITは偉そうな顔をしちゃいけない。ITは出しゃばっちゃいけない。自分は、今、こういうことがこんな風に出来ますよ。それは、こんな技術をこんな風に使っているからで、しかも、今、こう変わろうとしているんです。そこを一生懸命自分から下手に出て説明しなくちゃいけない。ものが売りたければ、商品説明用のパンフレットを必死に作るじゃないですか。IT産業側が「情報家電は生活を変える!」なんて勝手に思い描きながら、そういうのって、ホントは、全然作られていないんですよね。
でも、本当にその他の産業全体から評価して貰いたければ、情報家電産業毎、産業IRみたいなことをしないといけないんじゃないのと。そのために、先ず、自分達が外から見える、すなわち「可視化」を進めることが必要だと。

じゅあ、こうした可視化を進めるために、何か有効な方法論はないかと。
実は、自分は、この3年間くらい、電子政府を中心にビジネスソリューションの世界でのEAの導入活動に取り組んできました(例えば、ITアソシエイト協議会の成果物を参照)。EAのエッセンスは、企業や行政機関内部の縦割りを廃し、その全体最適化を実行するために、技術はもとより業務まで含めて組織全体を可視化することにあります。それを手助けする辞書が、参照モデルです。この作業を進めながら、情報家電全体にも、同じアプローチが使えるのではないかと思ったのです。

あまりに長いので、この辺で一度止めときます。このままではまだ、では何故、それがEAであり、参照モデルであるのか、で、何故そんなものを役所が作ろうよと言い出したのか、説明するに至っていません。それはまた次の機会にご説明しようと思います。

一つだけ、柳沼さんからコメントを頂戴しましたが、確かに、例題としては、TVならぬ「ディスプレイ」ビジネスって、その良い例題になるのではないかなあ、っと思います。。

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2004年10月10日掲載