※本プロジェクトは、終了しております。
情報家電の現状と展望
ここでは、報告書II「基本的な戦略」について、執筆者の村上敬亮情報政策課長補佐、森川毅情報経済課係長が解説します。ここでは、基本的に報告書第II部で論じている、戦略Iとしての、新しいイノベーションを核とした収益モデル構築への戦略、そして戦略IIとして、従来から強みを発揮してきた部分をどう伸ばしていくかについて、議論を進めていきます。
2004年10月19日 ビデオデッキに関する考察
日本の家電産業が世界を制した決め手は80年代のホームビデオデッキ市場の独占があったのではないでしょうか?現在でも録画方式が違えどもVHS方式でビデオテープが世界中に流通しているのも、映像録画装置としてVHSデッキが世界の家庭に普及したからです。それはいまのPCでのDOS/Vのデファクトスタンダードに近いと思います。この源泉となったのは
ビデオ技術を完成させたソニーがハリウッド(パラマウント)から裁判で勝ち取った私的複製権の解釈であったと思います。「刑事コロンボも刑事コジャックも、ビデオなら、あなたを迷わせません。」というキャッチコピーで消費者にTV視聴のタイムシフトという利便性を訴求し、TVのエアチェックという楽しみを家庭に提供したことと、同時期にビデオカメラの発売を行い、写真のように消費者にビデオを撮る楽しみを提供したことがビデオデッキの成功の源泉だと思います。
しかし、「TVを録画すること、録画した映像を再生することが消費者に提供できる楽しみ」というビデオ利用の点について、ビデオデッキが一般的に普及する過程おいて、少し利用のルールが変更されたように思います。それはビデオデッキが消費者の家庭に広まり、レンタルビデオやセルビデオのビジネスの成功を見たコンテンツ産業がビデオレコーダを自らのコンテンツを再生するプラットホームに見立て、コンテンツ産業の収益の源泉となるコンテンツビジネスの形ができあがったことです。
消費者の1日の可処分時間が有限であるため、自ずと視聴に対するコンテンツに対する選択枝が広がった結果、TVのように時間軸に固定されたものの視聴をビデオデッキでタイムシフトするよりも、質の高いコンテンツをランダムにレンタル店でレンタルや購入することへ消費者の志向が変化し、コンテンツパッケージへ消費者の消費の軸が移ったと考えられます。
コンテンツ視聴のための消費者の可処分時間が有限であるため、消費者の機敏な消費傾向を掴むことは重要なポイントであると考えます。なぜなら、現在進行しているインターネットのブロードバンド化による映像配信の実現は、さらにこの消費者のコンテンツに対する機敏な消費の選択肢を広げる可能性があるからです。
さらにそこに求められるの収益のための能力は「消費者のコンテンツの選択肢の広がりに対して、どれだけ消費をつなぎ止めらる質の高いコンテンツを作れるのか?」という能力ではないでしょうか?
ビデオデッキの本格登場から約25年の間にハードビジネスから、コンテンツビジネスへのルール変化が進み、利益の源泉もコンテンツへシフトしていきました。このビデオデッキの普及の歴史を振り返ったときに、日本の家電産業に教訓となる点が含まれているのではないでしょうか?これは今回のレポートで第四章「情報家電とコンテンツ産業」の検討を含めた理由でもあります。
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