先天梅毒予防に向けた妊娠届の早期提出意向促進:ランダム化情報提供実験による検証

執筆者 畠山 樹輝凪(大阪大学)/中山 一世(大阪大学)/大竹 文雄(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2026年10月  26-J-048
研究プロジェクト 機能するEBPMの実現に向けた総合的研究
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概要

近年、高所得国を含む多くの国で梅毒感染者数が急増しており、胎児に重篤な健康被害をもたらす先天梅毒の増加は公衆衛生上の重要な課題となっている。一方で、先天梅毒は、妊娠初期に母子保健サービスへアクセスすることで大部分が予防可能であり、初期アクセスに遅れやすい人々の早期受診を促すことが重要である。本研究は、出産経験者の実際の妊娠届提出行動からリスクスコアを構築し、ランダム化比較実験の参加者へ外挿することで、提出遅延リスクに応じた情報提供効果を検証した。分析の結果、先天梅毒予防を強調するメッセージは、平均的に早期提出意向を最も大きく高めた。一方、治療方法を伝えるメッセージは遅延リスクが高い層ほど効果が強く、最も高リスクな層では先天梅毒予防メッセージを上回る点推定が得られた。これらの結果は、平均効果だけでなく、政策的に重要な高リスク層への効果を踏まえて情報提供を設計する重要性を示している。過去の行動から予測したリスクを用いて介入効果の違いを検証する本研究の手法は、政策対象が少数かつ事前に観測しにくい他の課題にも応用しうる。