コーポレート・ガバナンスと企業内報酬格差:『賃金構造基本統計調査』の調査票情報による実証分析

執筆者 久保 克行(早稲田大学)/小澤 彩子(株式会社日本政策投資銀行 / 早稲田大学)
発行日/NO. 2026年10月  26-J-045
研究プロジェクト 企業統治分析のフロンティア
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概要

本稿は、2015年から 2023年までの厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の調査票情報を企業財務・コーポレート・ガバナンス情報と接続し、上場企業における組織階層と従業員報酬の関係を分析する。非役職者、係長級、課長級、部長級という企業間で比較可能な役職区分を用い、企業業績と賃金の関係、および社外取締役比率と職位間賃金差の関係を検証する。分析の結果、ROAと従業員賃金には正の関係があり、特に課長級・部長級で強い。一方、社外取締役比率が高い企業ほどROAと賃金の関係が強いという証拠は得られない。これに対し、社外取締役比率が高い企業ほど非役職者との条件付き賃金差は大きく、その関連は係長級、課長級、部長級と上位職ほど強い。以上は、社外取締役比率の高い企業では短期的な業績連動性よりも組織階層に沿った賃金勾配が急であることを示しており、昇進インセンティブやトーナメント型インセンティブと整合的である。