台湾のAPEC提案プロジェクトにおける気候変動関連性の実証分析――APECプロジェクトデータベースによる悉皆調査――

執筆者 服部 崇(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2026年10月  26-J-044
研究プロジェクト 東アジアにおける国際協調メカニズムに関する研究
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概要

APECプロジェクトとは、加盟エコノミーが作業部会等のAPECフォーラムを通じて提案し、主としてAPECの基金を財源として実施する、政策対話・調査研究・能力構築等の協力事業であり、各エコノミーがAPECをどの政策領域で活用しようとしているかを映し出す。本稿は、APEC Project Databaseを一次資料とし、台湾(Chinese Taipei)が2006年以降に提案した全309件のプロジェクトを悉皆調査し、その気候変動関連性を独自基準で分類した。単独提案の約31%が気候変動関連であり、この比率はエネルギー作業部会(96.3%)から人材開発作業部会(8.2%)まで、フォーラムごとに顕著な分化を示した。提案先フォーラムの構成に基づく間接的な比較では、この水準はAPEC全体の平均を上回り、エコノミー別に見ても上位グループに属すると推測される。台湾ホストの専門センターが気候変動関連案件の約4分の1を継続的に供給していたこと、また共同提案25件のうち中国との6件が馬英九政権期(2008~2016年)に完全に集中し、その分野が気候変動にとどまらず貿易円滑化やICT標準化にも及んでいたことも明らかになった。これらの知見は、台湾がAPECという多国間枠組みを国際的正統性の獲得・国際規範形成への実質的関与・非政治化された対中実務協力の窓口という複数の目的のために活用してきたことを示している。