新規開業企業の資金調達と取引先との関係

執筆者 井上 考二(日本政策金融公庫)/山田 佳美(駿河台大学)/深沼 光(大阪商業大学)
発行日/NO. 2026年5月  26-J-024
研究プロジェクト 企業金融・企業行動ダイナミクス研究会
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概要

日本ではスタートアップ支援や地域金融機関による事業性評価の高度化が政策課題となっているが、企業間取引関係が新規開業企業の資金調達に与える影響については十分に明らかにされていない。本稿は、取引関係が情報の非対称性を緩和し金融機関の資金供給に作用する経路と、取引先からの支援を通じて借入需要に影響を及ぼす経路とを理論的に区別し分析した。その結果、業績の良い取引先の確保は借入の有無にはほとんど影響しないが、借入金額を抑制する傾向が確認された。また、取引先とメインバンクが一致する場合、借入を行う可能性は低下するが、新規開業企業の総資産利益率が高い場合にはその低下効果は緩和される。さらに、経営者同士が同一学校出身である場合には借入可能性が低下する一方、出身都道府県が同じ場合には借入金額が増加する傾向がみられた。以上より、取引関係の効果は一様ではなく、供給側と需要側の双方に作用し、その影響は企業業績や関係の性質に依存することが示唆される。これらの知見は、地域金融機関の事業性評価や創業支援政策の設計に重要な含意を持つ。