| 執筆者 | 川上 淳之(東洋大学)/石田 三成(東洋大学)/岩崎 雄也(青山学院大学) |
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| 発行日/NO. | 2026年1月 26-J-006 |
| 研究プロジェクト | 包括的資本蓄積を通した生産性向上 |
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概要
本研究は、2011年東日本大震災が地域経済と雇用構造に与えた長期的影響を明らかにするため、まず、総務省「経済センサス-基礎調査」および総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」調査票情報(2009〜2021年)を用いて事業所の参入・退出を把握し、復興特別区域制度の活用事業者名簿と突合して政策効果を検証した。つぎに、経済産業省「経済産業省企業活動基本調査」調査票情報(2010〜2019年)と復興特別区域制度の活用事業者名簿を突合し、第37条(投資減税)および第38条(被災者向け雇用者控除)の効果をSun and Abraham(2021)の方法によるstaggered DIDを用いて推定した。
震災直後の2012〜14年には退出率が急上昇し、とくに沿岸部では津波浸水深や災害危険区域との関連が強く、8m超浸水地域では退出率が約75%に達した。2016年以降は従業者数の回復が事業所数より先行し、復興需要を背景とする参入も生じたが、建設や宿泊・飲食、医療・福祉など震災前と異なる産業構造が形成されつつある。退出は生産性の低い事業所で多かったが、一部では高生産性事業所の退出も確認された。
復興特区制度の効果については、第37条の適用企業では、有形固定資産当期取得額が処置年に69%増加し、1〜3年後も22〜33%の増加が持続した。また、有形固定資産ストックについても処置後に13〜21%程度の上昇が確認され、投資の増加が資本ストックとして蓄積したことが示された。一方、第38条による雇用・給与への効果は限定的であった。
以上より、震災後の企業動態は退出と参入が併存する再編過程であり、復興特区制度は設備投資の促進には寄与したが、雇用・給与への波及は限定的であったことが示された。