労働市場の多重構造と男女の不平等―不平等の要因の潜在クラス分析

概要

本稿は筆者が最近開発した「不平等の要素分解分析に結果の決定関数の多様性を仮定する有限混合モデルを結び付けた分析モデル」を用い、所得の男女格差のうち仲介変数の男女差により「説明される格差」について、所得決定式の異なる潜在クラスごとに格差の要素分解分析を行うことで、男女格差の生成メカニズムの多様性を明らかにする。分析結果は、所得決定の異なる3つの潜在クラスがあること。(1)平均賃金が最も高く、大卒者や大企業雇用者が比較的多く、大部分が正規雇用者である労働市場の潜在クラス1では年齢や勤続年数など長期雇用に関連する仲介変数が男女の所得格差の主たる原因であること、(2)平均所得が低めで、高卒者や中小企業雇用者が比較的多く、約3分の1が非正規雇用者である労働市場の潜在クラス2では、長時間労働やフルタイム勤務者割合など、就業時間に関する仲介変数が男女の所得格差の主な原因であること、(3)平均所得が3クラス中最低で、中卒者や零細企業雇用者が比較的多く、半数以上が非正規雇用者であり、サイズの小さい労働市場でもある潜在クラス3では、経営管理職や短時間勤務者の割合が所得の男女格差の主な原因であること、を示す。また(4)雇用形態や学歴は主として潜在クラス内ではなく、潜在クラス間の格差を通じて間接的に男女格差を生むこと、を示す。つまり男性に多い正規雇用者や大卒者が、最も有利な労働市場である潜在クラス1に属する割合が高いことが男女の所得格差に貢献している。また本稿はその新たな知見をもって、日本における労働市場の2重構造論の検討も行い、その特質を明らかにしている。