| 執筆者 | 乾 友彦(ファカルティフェロー)/金 榮愨(専修大学) |
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| 発行日/NO. | 2025年10月 25-J-028 |
| 研究プロジェクト | 包括的資本蓄積を通した生産性向上 |
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概要
本研究は、韓国経済における全要素生産性(TFP)の近年の停滞を「Productivity J-curve」仮説の観点から検証する。韓国は世界有数の研究開発(R&D)投資国であり、ICTやソフトウェア分野への積極的投資を行ってきたが、2000年代以降はTFP成長率が鈍化しており、「生産性パズル」が指摘されている。韓国上場企業データを用いたミクロ分析では、R&Dやソフトウェア投資と強く補完的に形成される観測されない無形資産の存在が一貫して確認された。さらにマクロ分析では、これらの無形資産を考慮して修正されたTFP成長率が、2008年以降、従来の測定値より年率約1%高いことを示し、典型的なJ-curve効果を実証的に捉えた。以上の結果は、無形資産投資の計測困難性とタイムラグが韓国経済の「生産性パズル」の一因となっている可能性を示し、人的資本・組織資本・デジタル資産といった補完的投資を含む無形資産統計の整備や、その活用を促す政策の重要性を示唆する。