コロナ支援策利用企業のパフォーマンス:事後評価

執筆者 森川 正之(特別上席研究員(特任))
発行日/NO. 2025年9月  25-J-021
ダウンロード/関連リンク

概要

本稿は、コロナ危機時に採られた企業支援策の中でも利用企業の多かった資金繰り支援、雇用調整助成金、持続化給付金の3つの政策を利用した企業の2023年度までの経営成果に関する観察事実を提示する。分析結果によれば、第一に、各種支援策を利用した企業の新型コロナ終息後の生産性は、コロナ危機直後に比べれば改善したものの低水準にとどまっている。第二に、資金繰り支援策及び持続化給付金を利用した企業の平均賃金は新型コロナ前の水準と違いがなくなっているが、雇用調整助成金を利用した企業は2023年度時点でも低水準にある。第三に、支援策を利用した企業の2023年度までの雇用変化を見ると非利用企業よりも減少している。第四に、支援策を利用した企業は2023年度に存続している確率が低く、政策的支援の効果に限界があったことが示唆される一方、生産性の低い企業が退出するという選別メカニズムを阻害する副作用を持ったとまでは言えない。