経済・商学部進学率の男女差

執筆者 井上 敦(NIRA総合研究開発機構)/田中 隆一(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2025年8月  25-J-018
研究プロジェクト 教育政策のミクロ計量分析
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概要

現在、日本の四年制大学における経済・商学部の女性比率は約30%にとどまっている。本稿では、2001年の特定の週に出生した子どもを全国規模で追跡した縦断調査データ「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」を用いて、四年制大学進学者における経済・商学部進学の男女差を規定する要因について実証的に分析した。経済・商学部は文系の中でも数学的素養が特に求められることから「文系の中の理系」と位置づけ、文系学部進学者における経済・商学部選択の要因と、四年制大学進学者における理系学部選択の要因を比較分析した。その結果、両者に共通する特徴として、高校1年時点で数学が得意であることは理系学部および経済・商学部選択と正の関係を、国語が得意であることは負の関係を示すことが明らかになった。一方、相違点として、高校1年時点で就きたい職業があることは理系学部選択と正の関係を示したが、経済・商学部選択とは負の関係を示した。さらに、Blinder–Oaxaca分解法を用いて男女差を生む要因について分析した結果、理系学部進学における男女差の49%は教科適性などの男女間の観察可能な属性の違いによって説明できるのに対し、文系学部進学者における経済・商学部進学ではその割合が14%にとどまった。このことは、経済・商学部選択の男女差の大部分が、観察される属性的要因以外によって生じていることを示唆している。