執筆者 | 金 榮愨(専修大学)/長岡 貞男(ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2025年8月 25-J-017 |
研究プロジェクト | ハイテクスタートアップと急成長スタートアップにおけるアントレプレナーシップ |
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概要
ビジネス・グループは、内部資本市場へのアクセスを可能とするだけではなく、グループ内の知識プールへのアクセスを可能とすることで、イノベーションを促進する可能性がある。しかしこうしたグループ内の知識フローについての、セレクション効果をコントロールした実証的な知見は乏しい。本論文では、日本企業の買収による子会社設立を利用して、ビジネス・グループの企業間知識フローへの影響を分析する。買収イベントとパネルデータを利用することで、ビジネス・グループによる買収対象のセレクション効果と、ビジネス・グループに内部化されることの措置効果の識別を試みる。本研究では、買収される企業と親会社の知識ストック、両者の技術的な近接性、両者の間の共同特許出願の経験の有無、買収後の子会社のガバナンス構造など、知識フローに影響を与える要因についての情報を、経済産業省企業活動基本調査のビジネス・グループに関する詳細な情報、特許データなどを活用して、把握する。基本的な分析結果として、買収による子会社化(外部独立企業のビジネス・グループ吸収)は、その水準を増加させるとともに、そのスピードを加速する傾向にある。また、この措置効果は、部分所有子会社化でも完全子会社化と同様に正で有意である。