潜在顧客情報の価値:営業履歴データを用いた実証分析

執筆者 宮川 大介(早稲田大学)/柳岡 優希(株式会社東京商工リサーチ)/矢澤 広崇(三井住友ファイナンス&リース株式会社)/雪本 真治(三井住友ファイナンス&リース株式会社)
発行日/NO. 2025年6月  25-J-015
研究プロジェクト 企業金融・企業行動ダイナミクス研究会
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概要

本研究では、法人向けリース契約を対象とした営業担当者(フィールドセールスパーソン)の営業活動において、成約見込みの高い潜在顧客をテレマーケティング担当者(インサイドセールスパーソン)が探索した情報の利用が成約確率の向上に寄与するか否かを、その因果関係に注目した上で実証的に検討したものである。国内リース業最大手のSMFLが保有するリース営業活動実績データ、潜在顧客リスト、営業活動の成否実績データを用いて、Kleinberg et al. (QJE 2018)で提案されたcontraction techniqueなどに基づく分析を行った結果、フィールドセールスパーソンが独力で接触する傾向が弱いクラスの潜在的顧客について、インサイドセールスパーソンによる追加的な情報提供が成約確率を改善させることを確認した。一方で、前者が独力で接触する傾向の強いクラスの潜在的顧客については、後者による情報提供を通じた成約確率の改善は認められなかった。以上の結果は、異なる方法に基づく情報生産の価値が条件に応じて変化することを意味しており、適切なデータの活用が企業パフォーマンスの改善に繋がることを示唆するものである。