執筆者 | 深谷 玲子(京都大学)/山田 和郎(京都大学) |
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発行日/NO. | 2025年6月 25-J-014 |
研究プロジェクト | ハイテクスタートアップと急成長スタートアップにおけるアントレプレナーシップ |
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概要
本稿の目的は、新規株式公開(IPO)企業の投資行動を明らかにすることである。その際、近年のIPO企業の多様化を踏まえたうえで、従来の有形固定資産投資に加え、無形資産(無形固定資産、組織資本、研究開発投資)や企業買収など多面的な投資指標を用いた。分析の結果は以下のとおりである。第1に、IPO企業は、時期による変動が大きいものの、無形資産への投資が増加傾向にあることが分かった。既存上場企業と比較してみても、組織資本、無形固定資産のいずれもが高いことが確認された。第2に、少なくともIPO企業が既存上場企業(ここではIPOから5年を超過している上場企業とした)と比較して、過少投資であるとの証拠は確認されなかった。マッチングの手法により結果が異なるが、IPO企業は既存上場企業と比較して同等、あるいは一部において超過的な投資を行うことが確認された。マッチングの結果を合わせると、無形資産依存型など従来にないIPO企業の投資が多いことが示唆される。第3にIPO企業内の異質性について検証を行った。IPO 企業内における投資感応度が高いことが確認された。このことから、特に投資機会の多い企業はそれに応じた投資を行っていると言える。