設備投資と法人税:近年の税制改正に着目したミクロデータ分析

執筆者 高岡 暸(神戸大学)/宮崎 智視(神戸大学)
発行日/NO. 2025年5月  25-J-010
研究プロジェクト 法人課税の今後の課題と実証分析
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概要

本稿では、企業の財務データを用いて2008年以降の法人税減税が企業の設備投資に及ぼす影響を分析した。推定にあたっては、tax-adjusted Qを用いた設備投資関数にキャッシュフローなどを加え、その影響を検証した。分析の結果、法人税減税はtax-adjusted Qを通じて、法人税改正があった多くの年で設備投資に対して有意に正の影響がみられた。しかしながらtax-adjusted Qの推定値は1を大きく下回っている。このことは、減税のインパクトは大きくはなく、投資を刺激する効果は限定的であったことを示唆するものである。さらに設備投資に対する反応は、特に「成長企業群」においてその効果が強くみられた。このことは法人税減税による効果は一様ではなく、その企業の特徴などにより反応が異なることを示すものである。