執筆者 | 山口 一男(客員研究員) |
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発行日/NO. | 2024年12月 24-J-035 |
研究プロジェクト | 労働市場における男女格差の原因と対策 ― 人的資本、教育、企業人事、職業スキルの観点からの理論及び計量研究 |
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備考 |
初版:2024年12月 |
概要
本稿は米国総合社会調査(GSS)と日本版総合社会調査(JGSS)の2000年から2018年の調査データに基づき、年齢25-64歳有業者を対象にして、「職の科学技術スキル」と「対人サービススキル」という2種の職業スキルの達成の男女格差とその要因について日米比較を行っている。続いて上記母集団のうち通年で週20時間以上従業した雇用者を母集団として限定の上、男女の年間所得の格差の原因を要素分解し、その結果の日米比較から男女の所得格差解消に関し日本が抱えている問題を明らかにしている。男女格差の要因分析にはBlinder-Oaxaca流の要因分解分析の拡張であるNeumarkの方法を用いている。所得格差の仲介要因としては、①学歴、②年齢、③就業時間、④雇用形態、⑤経営・管理職か否か、⑥職の科学技術スキル、⑦職の対人サービススキルを用いている。結果は、日本の男女所得格差が米国の格差に比べて大きくなる理由として、(1)就業時間と雇用形態が所得に影響する仕方に長期・長時間雇用重視の日本的雇用システムの在り方が強く影響し、それが男女格差を非常に大きくしていることと、(2)学歴と経営・管理職の達成についてすでに男女同等か女性がむしろ上回る現状の米国に対し、日本がこの点遥かに遅れていることが強く影響していること、を明らかにしている。また2種の職業スキルが男女の所得格差に与える影響の仕方についても日米の違いがあり、その違いもあわせて明らかにしている。