執筆者 | 渡邊 純子(ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2024年12月 24-J-032 |
研究プロジェクト | 産業競争力政策の形成過程に関する研究 |
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概要
本稿では、2000年代後半から2010年代初頭にかけての日本における産業競争力政策の形成過程を分析して跡づける。日本経済は、バブル崩壊後、不良債権処理を中心とする金融再生とともに企業の事業再編などの産業再生に取り組み、2000年代半ばに一区切りつけた。産業再生を政策面から支援した1999年制定の産業活力再生特別措置法(産活法)は、その後も成長戦略に軸足を移しながら法改正を経て存続し、2013年制定の産業競争力強化法に継承された。本稿では、産活法の2007年、2009年、2011年改正から2013年の産業競争力強化法の制定に至る過程を資料に基づいて明らかにする。
1999年制定の産活法は、バブル崩壊後の産業再生を税制等の政策面から支援するものであったが、2000年代半ばになると産業再生は一段落し、政府は新しい成長戦略を描くようになった。それに対応して、産活法も、より前向きな事業再編やイノベーションの創出に政策の軸足を移した。産業競争力強化法は、多くの条項を産活法から引継ぐとともに、①過少投資、②過剰規制、③過当競争を解消し、「収益力を飛躍的に高め世界で勝ち抜く製造業を復活させるという」新たな目標のもと、設備投資支援のための税制等の優遇措置や規制緩和策を盛り込んでいた。
以上のような産活法や産業競争力強化法は、企業の生産性向上や新事業創出などの面で一定の成果があったが、その政策効果や課題については、今後、さらなる検証が必要である。