執筆者 | 渕 圭吾(神戸大学) |
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発行日/NO. | 2024年8月 24-J-020 |
研究プロジェクト | 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第VI期) |
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概要
本稿は、デジタル・サービス税(DSTs)の背景および最近の議論状況について検討するものである。前半では、DSTsが登場した背景として、経済のデジタル化、とりわけ、国内消費者が国外事業者から直接財物や役務を購入する取引の一般化が所得課税(及び消費課税)に与える致命的な影響を指摘する。DSTsの登場が必然だと主張するわけではないが、従来の所得課税(所得税・法人税)および消費課税(「消費税」)とは異なる種類の租税を視野に入れる必要があるかもしれない。後半では、イギリスのフィリップ・ベイカーによる、DSTsが(所得課税に関する)租税条約との関係でも許容されるかもしれない、という見解を批判的に検討する。グロスの額(支払われた金銭の額)を課税標準とする租税であれば所得税ではなくそれゆえ租税条約による規律を免れる、という彼の見解は妥当ではなく、DSTsは租税条約に違反すると考えるべきだと結論づける。このため、アメリカがデジタル課税に関する国際的な合意のうち第一の柱(市場国への税源配分)に同意しないのは無理もない、ということになる。