日本企業・労働者のAI利用と生産性

執筆者 森川 正之(所長・CRO)
発行日/NO. 2024年3月  24-J-011
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概要

人工知能(AI)の利用が急速に拡がる中、それが経済成長や労働市場に対してどのような効果を持つのかへの関心が高い。しかし、AIの利用実態に関する統計データが乏しいことが、実証研究の大きな障害となってきた。本稿は、企業及び労働者に対する独自のサーベイに基づき、日本におけるAIなど新しい自動化技術の利用実態、それらを利用する企業・労働者の特性、AIが生産性や雇用に与える効果についての見方を概観する。その結果によれば、第一に、AI利用企業は急増しており、高学歴労働者シェアの高い企業ほどAIを利用している傾向がある。ロボット利用企業も増えているが、労働者の学歴との関係は希薄であり、技術によって労働市場への影響が異なることを示唆している。第二に、AI利用企業は、生産性や平均賃金が高く、中期的な期待成長率も高い。第三に、AI利用企業は、それが自社の生産性や賃金を高める一方、雇用を減少させる可能性があると予想している。第四に、労働者レベルでも高学歴層ほどAIを利用しており、現時点においてAIと高学歴労働者が補完的なことを示唆している。第五に、AIを利用している労働者は、業務の生産性が平均で20%程度向上したと判断しており、AIが潜在的にかなり大きな生産性効果を持つ可能性を示唆している。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:24-E-074