SDGs実現に向けたFTAの役割

執筆者 髙木 誠司(コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2024年2月  24-J-006
研究プロジェクト 持続可能性を基軸とする国際通商法システムの再構築
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概要

本稿は、SDGsの実現に向けたFTAの貢献を、日本がメンバーとなっている3つのメガFTAを事例として分析し、現状の貢献の状況及び今後の更なる貢献の可能性を分析するものである。まず、SDGsの17目標169ターゲットには国際通商関係の直接の言及は少ないが、SDGsに関連した交渉全体を踏まえると、FTAの主たる目的の貿易自由化等自体のSDGsへの貢献は大きいものと評価できる。そして、3FTAの具体的内容を分析すると、3FTAともに、多くのSDGsに貢献する規定を有していることがわかる。CPTPP、日EU・EPAにおいては、SDGsに貢献する、環境、労働、透明性など新しい分野の規定を多く有している。他方、RCEPは、他の2FTAに比べると、新しい分野の規定は限定的だが、途上国配慮や協力分野でより強化された規定を有している。このように、3FTAを見ても、現行FTA協定において幅広い分野でSDGsへの貢献が見られるが、既存FTAのメンバー拡大、内容改善、新規FTAの締結などにより、FTAによるSDGsへの今後の貢献の拡大が考えられる。また、FTAに類似した、貿易自由化を含まない経済協定によるSDGsへの貢献も今後とも拡大の余地が大きい。SDGsに貢献するFTAの規律には、法的拘束力の弱い規定や協力規定なども多いが、これらについては、今後の実践の中で貢献の程度・評価が定まってくるものと考えらえる。