デジタル経済連携協定(DEPA)の意義に関する一考察―デジタル貿易の多角的ルール形成に与える影響を中心にして―

執筆者 渡辺 翔太(野村総合研究所)
発行日/NO. 2024年1月  24-J-003
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第VI期)
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概要

DEPAは、デジタル貿易に特化した初の通商協定である。その創設国はすべて(CP)TPP加盟国でもあるが、TPPで高水準なルール形成を達成した後、なぜDEPAを創設したのか。創設国の意図を分析した結果、DEPA創設はWTOやTPPの補完を目的とし、デジタル経済の重要な要素について相互運用性や協力を確保し、ビジネス上の障害を取り除くことにある点が明らかになった。

DEPAはデジタル経済に必要な要素を既存協定よりも網羅的に示す点で、意義を有する。ただし、その多くは通商以外のフォーラムで取組みが進んでいる。この重畳的なルール形成の原因として、デジタル政策と通商政策の人的交流の無さをあげ得るかもしれない。

相互運用性確保によるビジネスの障壁除去を目指す点で、DEPAと日本の方向性は一致するが、こうした取り組みは既に進んでいるため、日本があえてDEPAに加盟する意義は乏しいとも思える。しかし、韓国はDEPAが多角的ルールに発展する期待があるとし、グローバルなルール形成をリードするとして加盟を表明した。中国も同様の意図を持っている可能性がある。その政治的な意義やルール形成の経路を考えると、日本がDEPAに加盟するというのも有力な選択肢の1つであるといえる。