1947年教育制度改革に伴う教育年数の延伸と就学率の変化

執筆者 岡庭 英重(山形大学)/井深 陽子(慶應義塾大学)/丸山 士行(曁南大学)
発行日/NO. 2024年1月  24-J-001
研究プロジェクト コロナ禍における日中少子高齢化問題に関する経済分析
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概要

本稿の目的は、義務教育年数を8年から9年に延伸した1947年の教育制度改革によって、中学校3学年相当の15歳の子どもの就学率がどのように変化したのかを記述的に捉えることにある。多くの既存統計では、これらの子どもの数を改革前後で一律に比較することができず、本改革により実際に教育年数が延伸したのか、その規模がどの程度であったのかが明らかでない。本稿では、『文部省年報』(文部省)及び『人口推計』(総務省)を使用し、旧制及び新制の学校区分と学年を照らし合わせ、15歳の子どもの就学率を算出した。集計に先立ち、改革前の義務教育修了状況を精査すると、改革前からすでに約9割の子どもが8年間の義務教育を受けていることが確認された。集計の結果、改革後15歳時点就学率が男子は約16%ポイント、女子は約22%ポイント上昇し、それぞれの就学率が95%程度まで上昇しており、実態としても義務教育9年制が確立していたことが示された。また,本改革は改革前に存在した就学率の男女差の縮小にも寄与したことがわかった。本改革は我が国の教育制度改革史上重要な転換点であるものの、そもそも改革による義務教育期間の延伸は1年と小幅にとどまっていること、さらに多くの子どもが改革以前から9年の教育を受けていたことから、教育年数で測った場合の人的資本蓄積への影響は顕著でない可能性が示唆された。