執筆者 | 近藤 絢子(ファカルティフェロー)/深井 太洋(筑波大学) |
---|---|
発行日/NO. | 2023年11月 23-J-049 |
研究プロジェクト | 子育て世代や子供をめぐる諸制度や外的環境要因の影響評価 |
ダウンロード/関連リンク |
概要
本稿は、個人住民税課税記録データを用いて、有配偶女性の就労調整について記述的分析を行う。まず、有配偶女性の年収分布上で、所得税課税対象となり税制上の扶養から外れる103万円と、社会保険の扶養から外れる130万円に「年収の壁」があることを確認する。2018年の配偶者控除・配偶者特別控除の変更について、有配偶女性をトリートメントグループ、無配偶女性をコントロールグループとした差の差推計では、103万円以下に年収を調整する有配偶女性の割合が減るという結果を得たが、夫の所得税率別の分析ではそれほど頑健な結果は得られなかった。結婚や出産などのライフイベントの前後では、元の収入が低かった女性ほど、結婚・出産をきっかけに扶養の範囲に年収を抑える傾向が確認された。出産後、子供が成長するにつれて女性の労働供給は増加傾向となるが、子供が幼稚園から高校生まで年収の壁は存在している。さらに、同一個人を5年間追跡すると、扶養の範囲で働いていた人の2/3は5年後も扶養の範囲内にあり、結婚・出産後もフルタイム就業を続ける人と結婚出産を機に退職し、非就業あるいは扶養の範囲のパート就業にとどまる人との二極化が示唆される。