生産性と労働移動

執筆者 吉川 洋(ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2023年11月  23-J-047
研究プロジェクト 経済主体の異質性と日本経済の持続可能性
ダウンロード/関連リンク

概要

日本の経済社会は、1990年代初頭にバブルが崩壊して以来長く閉塞感に覆われてきた。日本経済の活性化のためには、リスキリングを通して生産性の高い産業/企業へ労働者が移動して、経済全体の生産性を高める必要がある。内閣府の「経済財政運営と改革の基本方針2023」でも、このような議論がなされている。本論文では、過去25年間の生産性と労働のセクター間移動に関する実証研究を検討する。わが国では、介護など労働の移動先となるセクターにおいて生産性の上昇率が低いという問題がある。生産性の上昇が十分でない根本的な原因は、労働者のスキル不足ではなく、民間企業・政府のリスクテイキング、企業家精神(entrepreneurship)が十分でないところにある。