変容するEUの対中戦略―経済安全保障分野を中心に―

執筆者 鶴岡 路人(慶應義塾大学)
発行日/NO. 2023年10月  23-J-037
研究プロジェクト グローバル・インテリジェンス・プロジェクト(国際秩序の変容と日本の中長期的競争力に関する研究)
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概要

EU(欧州連合)の対中戦略が変容している。欧州は「中国に甘い」との批判が日本では長らくなされてきたが、2010年代半ば以降、EUと中国との関係は大きく変容している。本DPでは、EUが中国との関係において何を実現しようとしているのか、そのなかで、広義の経済安全保障分野に該当する各種政策ツールはいかに位置付けられるのかを検証する。

EUにとっての最も直接的な目標は、自らの経済的利益の擁護である。2010年代半ば以降、対中認識が急激に悪化し、EUは投資審査や輸出管理、補助金対策の強化、さらには経済的威圧(economic coercion)への対応など、中国を念頭においた政策ツールを急速に整備してきた。これらはすべて、欧州の経済利益を守るための防御的な措置と位置付けられる。ただし、その背景に経済安全保障を含む安全保障問題、さらには新疆ウイグルにおける強制労働を含む人権問題、香港における自由の後退などへの懸念や反発の拡大という背景も存在する。経済と政治、安全保障が重なり合うような領域が拡大しているのである。