日本企業のAI導入と生産性:スピルオーバー効果とイノベーション効果

執筆者 池内 健太(上席研究員(政策エコノミスト))/乾 友彦(ファカルティフェロー)/金 榮愨(専修大学)
発行日/NO. 2023年9月  23-J-034
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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概要

近年、人工知能(Artificial Intelligence, AI)のビジネスでの利用が広がり、AIが企業のパフォーマンスにどのようなメカニズムで、どれほど影響するかに関心が高まっている。本研究では、『経済産業省企業活動基本調査』、TSRの企業間取引データ、プレスリリースデータ、IIPパテントデータベース情報などを用いて、企業のAI導入が企業のパフォーマンスに与える影響を分析する。自社の研究開発によって生み出されるAI関連特許導入に加え、取引先企業(サプライヤーとカスタマー)のAI導入を通じた影響も分析する。また、AIによる生産過程の効率化(プロセスイノベーション)に加え、新製品の創出や既存製品の付加価値向上(プロダクトイノベーション)も分析する。主な結果は以下のとおりである。

(1)AI関連特許は企業の生産性と正の相関があり、非AI特許よりも生産性との関係が強い。
(2)特許出願件数が減少し始めた2009年以降も、AI関連特許と企業生産性の関係は強まっている。
(3)AI関連特許は主に産業内で中間以上の生産性の企業の生産性に貢献する。生産性の低い企業ではAI関連特許が生産性に負の影響を与える。
(4)取引関係企業のAI導入が当該企業の生産性に正のスピルオーバー効果をもたらすことは確認できない。
(5)AI関連特許は企業のプロダクトイノベーション、プロセスイノベーション、技術イノベーションのすべてに強く関係し、特に質の高いAI関連特許はイノベーションに中期的かつ重要な影響を与える。