大学の安全保障輸出管理体制をめぐるアンケート調査

執筆者 手塚 沙織(南山大学)/五十嵐 彰(大阪大学)
発行日/NO. 2023年9月  23-J-031
研究プロジェクト グローバル・インテリジェンス・プロジェクト(国際秩序の変容と日本の中長期的競争力に関する研究)
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概要

米中の技術覇権争いの激化に伴い、日本の経済安全保障環境が変容する中、技術管理の重要性は高まっている。では、技術を生み出す研究者が属する大学では、技術管理を含めた安全保障輸出管理に関する政策を具体的にどのように運用し、運用上の課題には、どういった制度が効果をもたらすのか。これらの点を明らかにするため、日本全国の全ての国立大学および理工医薬系を持つ公立大学と私立大学に対しアンケート調査を実施した。本稿では、過去の事例報告などをふまえ、学問の自由と輸出管理上の問題点として提起されてきた主要な項目5つ(大学当局による産学連携の一環としての国外企業との研究の把握、デュアルユース(軍民両用)技術になりうる研究の把握、外為法の例外規定の技術に関する判断、リスト規制対象となる研究者又は研究室に対する研究プロジェクトの資金の出所の開示要求、外国籍の教員や学生の帰国時に際した内部規定遵守の実施)を従属変数にし、どういった変数が現行の大学の輸出管理体制と関連を持つかを検証した。その結果、輸出管理担当部署の専任を有している大学は、外為法の例外規定の技術の判断がより明確であり、デュアルユース技術になりうる研究を把握していることがわかった。さらに、輸出管理担当部署の職員に経験者がいることは、デュアルユースの可能性のある研究を把握しており、リスト規制対象となる研究者又は研究室に対する研究プロジェクトの資金の出所を開示請求する傾向にあった。上記の点に対し、現在の政府アドバイザーと政府による学習提供は有意な関連があるとは言い難いことから、優先的な政策的示唆として専門人材の育成を提言したい。