執筆者 | 北野 尚宏(早稲田大学)/宮林 由美子(元国際協力機構) |
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発行日/NO. | 2023年7月 23-J-025 |
研究プロジェクト | グローバル・インテリジェンス・プロジェクト(国際秩序の変容と日本の中長期的競争力に関する研究) |
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概要
中国輸出入銀行の譲許的融資である優遇借款(GCL)と優遇バイヤーズ・クレジット(PBC)は「二つの優遇条件借款」(GCL・PBC)と呼ばれる。中国政府の開発協力、経済協力の主たるスキームとして、開発途上国との政治・外交・経済関係強化に用いられると共に、中国企業の途上国インフラ市場進出を資金面で支えてきた。本稿では、筆者らが2018年より作成に取り組んできたGCL・PBCデータベース(2000~2020年)を用い、その現状を分析すると共に、政策ツールとしての課題について検討した。 GCL・PBC承諾額は2006年ころから急増し、2014年をピークとして債務問題などを背景に2018年以降減少し2020年には急減している。地域別には、アジア、アフリカが最大の供与先で、2010年代以降アジアの中では東南アジアから南アジアへのシフトがみられる。セクター別では運輸、電力の割合が大きく、アフリカ、大洋州では通信セクターの割合も目立っている。GCL・PBCの主な借入国のうち、債務破綻状態にある又は債務破綻に陥るリスクが高い国が目立っている。中国政府にとって債務問題への対応が喫緊の課題であると共に、今後の方向性としてはGCL・PBCの制度改善の可能性が考えられる。