経営者のタームリミット制の導入と企業価値

執筆者 石田 惣平(立教大学)/鈴木 健嗣(一橋大学)/西村 陽一郎(中央大学)
発行日/NO. 2023年4月  23-J-017
研究プロジェクト 企業統治分析のフロンティア
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概要

本研究の目的は、経営者が定期に交代するタームリミット制導入の決定要因及びその企業価値へ及ぼす影響を検証することにある。検証の結果は、高学歴な経営者候補が多く、金融機関持ち株比率が低く、研究開発型の企業ほどタームリミット制を導入していることが分かった。また、非導入企業では経営者の在任期間と企業価値の間に逆U字型の関係がみられるが、導入企業ではそうした関係はみられない。就任直後1~2年間の企業価値は非導入企業より導入企業において高く、3年目以降には企業価値の違いが導入の有無にかかわらず見られなくなった。これは、タームリミット制導入企業では、就任直後の混乱やコストを抑えるとともに、在任期間が長期化するデメリット(能力の陳腐化戦略硬直化・ガバナンスの悪化)が生じる前に経営者が退任することで逆U字型関係がみられなくなるという考えと整合的な結果である。