外資企業による日本企業のM&A効果

執筆者 田中 清泰(ジェトロ・アジア経済研究所)
発行日/NO. 2023年3月  23-J-011
研究プロジェクト 直接投資の効果と阻害要因、および政策変化の影響に関する研究
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概要

外資企業による対日直接投資は、日本経済の活性化につながると期待される。しかし、外資企業が日本企業を合併買収(M&A)した後に、買収された企業の経営状況が改善(悪化)するのか、十分に検証されていない。本稿は、経済産業省『外資系企業動向調査』と『企業活動基本調査』の調査票情報を接続して、(1)外資に買収された企業は、M&A以降に売上や利益、雇用が変化したのか、(2)外資に買収された企業は、どのような特徴があるのか、検証する。2000‐2019年間の企業パネルデータを構築して、外資企業の選択バイアスは傾向スコア重み付け回帰モデルで対処している。パネルデータの構成上、買収時点及び買収以降も個別企業として存続した企業のみが対象となり、事業部門のみの売却や買収の結果、合併した場合には対象外となる。推定の結果、外資企業に買収された企業は、M&A以降に売上や利益、雇用を減らす傾向がある。一方、非製造業においてM&A以降に売上が改善する傾向が見られるため、外資M&A効果は個別案件で異なる可能性が高い。今後の課題として、外資M&Aが日本企業の経営状況を改善(悪化)する条件を検証する必要がある。