在宅勤務の生産性ダイナミクス:アップデート

執筆者 森川 正之(所長・CRO)
発行日/NO. 2023年3月  23-J-007
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概要

本稿は、雇用者のパネルデータ(2020~2022年)に基づき、日本におけるコロナ危機後の在宅勤務のダイナミクスを分析したものである。分析結果によれば、第一に、在宅勤務実施者の割合は減少傾向が続いているが、2022年末時点でも新型コロナ以前と比べるとずっと高い水準にある。第二に、平均的な在宅勤務実施頻度は週2~3日という状況が続いており、ハイブリッド型の在宅勤務が支配的である。第三に、在宅勤務の主観的生産性は改善が続いているが、2022年末時点でも平均的には職場に比べて約20%低い。第四に、在宅勤務継続者の自宅での生産性は80%台半ばで頭打ちとなっており、最近の在宅勤務の平均的な生産性上昇は、自宅での生産性が低い雇用者の職場回帰というセレクション効果による。第五に、新型コロナ終息後も高頻度での在宅勤務を希望する雇用者は増加傾向にある。以上の結果は、在宅勤務において生産性に基づく自然な選択が働いていること、在宅勤務者にとってこの働き方のアメニティ価値が高まっていることを示している。

Published: 森川正之「在宅勤務の生産性ダイナミクス」, 『経済研究』74巻1号&2号, er.ar.026423,2023年.
https://econ-review.ier.hit-u.ac.jp/all-issues/74/1and2/er.ar.026423