執筆者 | 河村 和徳(東北大学) |
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発行日/NO. | 2022年11月 22-J-040 |
研究プロジェクト | 先端技術と民主主義:技術の進展と人間社会の共生を目指して |
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概要
日本では、新型コロナウイルスが感染拡大しても公職者の選挙を延期しない判断がなされている。ただし、選挙過程は、構造的に「3密(密閉、密集、密接)」が生じやすい。そのため、選挙実施にあたり、ほとんどの選挙管理委員会が感染防止対策を実施し、それによって投票が困難になる有権者への投票権保障にその多くが取り組んだとされる。本稿は、市区町村選挙管理委員会事務局に対して実施された郵送調査を利用し、新型コロナ禍での日本の選挙ガバナンスの実態を検討したものである。調査データは、次のような現状を示している。たとえば、2020年1月以降のコロナ対策としては、投票所のレイアウトの見直しを行った選管が88%にも上り、投票日当日の混雑回避の観点から期日前投票を利用するよう呼びかけた選管は79%もあった。また投票箱を積んだ期日前投票車を巡回させたり、投票所への移動支援を実施したりなど、自主的な投票環境向上策を採った選管が複数あることも確認された。コロナ感染患者のために創設された特例郵便等投票の利用については、13%の選管が「利用申請があり有効な投票があった」と回答した。非接触型の投票環境が求められたこともあり、選管職員の多くがデジタル技術を活用した投票権保障に賛成であることも明らかになった。ただし、その一方で、機器などのトラブルに懸念をもつ職員は少なくないことも示された。