第一次世界大戦における日本経済界の外交姿勢:―大戦中期の対主戦国関係と経済同盟構想を中心に―

執筆者 坂本 雅純(コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2022年10月  22-J-038
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概要

第一次世界大戦期における日本の対外関係史には、主に中国権益やそれに関連する対米関係といったアジア太平洋地域を中心とする外交史と、所謂「大戦景気」に関連する通商史という二つの流れが存在すると考えられる。しかしながら、両者の関連性、例えば日本の外交に関する経済界の思惑についてはあまり着目されてこなかった。そこで大戦中期に焦点を当て、当時の主要な経済紙誌及び大藏省外国貿易年表等を用いた分析を行ったところ、経済界は、通商事情を背景として、英国、ロシア、ドイツといった第一次世界大戦の主戦国に対する一定の外交的な姿勢を示していたことが分かった。同時に1916年の連合国経済会議で議論された、戦後体制を含む連合国間の経済同盟、ないし対峙する国との恒久的なデカップリングの構想には、経済界が少なからず懸念を示していたことも分かった。この結果は、外交と通商が密接に結びつく現在の日本の対外政策を考える上で、経済界の意向を考慮することの意義を示唆する。