概要
本研究は、2015年度に実施された日本の研究開発税制における制度変更が研究開発投資の量と質に与えた効果について実証的に分析することを目的とする。反実仮想シミュレーションを用いた分析の結果、2015年度の繰越税額控除制度の廃止とオープンイノベーション(OI)型の拡充はそれぞれR&D投資総額の減少及び外部支出R&D投資の増加に寄与していたことが明らかになった。税収の変動との関係については、繰越税額控除制度の廃止による税収の増加はR&D投資額の減少分とほぼ等しく、OI型の拡充による税収の減少は外部R&D投資額の増加分よりも小さかった。また、労働生産性上昇率に与える効果は繰越税額控除制度の廃止のマイナスの効果とOI型の拡充によるプラスの効果がほぼ相殺し合い、全体では大きな影響がなかったとみられる。加えて、本研究の試算によれば2015年度のOI型の拡充には産学共同出願特許の件数を増加させる効果がみられた。このことから、2015年度のR&D税制における制度変更は産学の共同研究などのオープンイノベーションの促進し、生産性を押し上げる効果があったが、同時に繰越税額控除制度の廃止によってR&D投資を減少させることでOI型の拡充による生産性の押し上げ効果が相殺されたと考えられる。