執筆者 | 加藤 大貴(大阪大学)/佐々木 周作(東北学院大学)/大竹 文雄(ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2022年3月 22-J-011 |
研究プロジェクト | 日本におけるエビデンスに基づく政策形成の実装 |
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概要
本研究は、風しんの抗体検査・ワクチン接種を無料で受けられるクーポン券の政策効果を推定した。風しん抗体保有率は40歳から57歳の日本人男性の間で低くなっているため、厚生労働省は2019年度から段階的に、風しんの抗体検査とワクチン接種を無料で受けられるクーポン券を発行してきた。2019年度は、40歳から46歳の男性宛にはクーポン券が自動的に送付された一方で、47歳以上の男性がクーポン券を受け取るためには自ら申請する必要があった。我々は、この事実を基に回帰不連続デザインによる識別戦略と全国規模のオンライン調査の回答データを使って、クーポン券の自動送付が抗体検査の受検率やワクチンの接種率に与える効果を推定した。主な結果は以下の通りである。第一に、クーポン券の送付は抗体検査の受検率を約16%ポイント高めるとともに、抗体検査とワクチン接種の両方を受ける確率を約5.1%ポイント高めた。第二に、その送付はクーポン券を使った厚生労働省の風しん予防対策の認知度を高めた一方で、風しん自体の知識への影響は観察されなかった。これらの結果はクーポン券の自動送付はその取得コストを下げる手段としてだけでなく、抗体検査やワクチン接種を無料で受けられるという情報を提供する手段としても機能していたことを示唆している。